紫月探偵事務所には、その日も変わらぬ穏やかな午後が訪れていた。レイン、ヴァンパイア探偵は、紅茶を片手に新聞を読んでいる。助手のそらは、パソコンの画面に集中していた。
「レインさん、見てください!これは珍しい依頼ですよ!」そらが興奮してレインに声をかけた。画面には「カップケーキコンテストの謎」の依頼が映し出されていた。
「どうやら、地元のカップケーキコンテストで盗難事件が起こったらしい」とそらが続けた。
興味をそそられたレインは、早速調査を開始することにした。彼らはコンテスト会場に向かい、主催者から話を聞いた。
「最高のカップケーキがなくなったんです。これがないとコンテストは成り立ちません!」と主催者は焦っていた。
レインとそらは、会場で目撃証言を集め始めた。参加者や観客から話を聞きながら、レインはひとつの疑念を抱いた。
「この盗難、ただのいたずらではないかもしれない」とレインはそらに話した。彼は会場の裏手へと向かい、不審な足跡を発見した。
足跡を追っていくと、彼らは小さな公園へとたどり着いた。そこで、地元の有名なパティシエが、盗まれたカップケーキを眺めていた。
「どうしてこんなことを?」とレインが尋ねたところ、パティシエは涙ぐみながら答えた。「私は…自分の作ったカップケーキに自信が持てなくて。他の素晴らしい作品を見ると、自分の劣等感に勝てなくて…」
レインは彼に優しく言った。「あなたのカップケーキには、あなた自身の特別な味があります。比べる必要はありません。」
パティシエはカップケーキを返し、コンテストに戻って自分の作品を出品する決心をした。コンテストは無事に終了し、参加者たちはそれぞれのカップケーキの素晴らしさを称え合った。

レインとそらは、事務所に戻る途中で笑顔を交わした。「甘い謎も、時にはいいものですね」とレインが言った。
夕暮れ時、紫月探偵事務所にはまた穏やかな時間が流れていた。